東北大学は,セイコーインスツルの子会社で,半導体の製造・販売を行なうエスアイアイ・セミコンダクタと共同で,UV-AからUV-Bまでの紫外線領域を検知するシリコンを使った紫外線(UV)センサーの量産化技術を開発した(ニュースリリース)。
研究グループでは,これまでに190~1100nmの広光波長帯域で高い感度を有し,強い紫外光に長期間照射されたとしても性能劣化が起こらない高い 耐光性を有するシリコンフォトダイオード技術を開発してきた(JST先端計測分析技術・機器開発プログラム 要素技術タイプ,平成23年度~平成25年度)。
今回,共同開発した量産化技術は,このシリコンフォトダイオード技術を応用して差分型の検出方式を新たに導入した。紫外光に対して高感度なフォトダイオードと低感度なフォトダイオードの2つのフォトダイオードで構成し,その差分を計測することで,フィルターなしで可視光成分をカットしUV波長帯で感度を際立たせることを実現した。
従来,シリコンフォトダイオードで可視光をカットする場合,専用フィルターにより可視光成分をカットし,UV-A,UV-Bの波長帯を測定していたが,これによりフィルターが無くても,可視光や近赤外光を含む背景光がある環境において,紫外線領域の光信号を選択的に効率よく検出するセンサーを製造することができる。
近年,ヘルスケアの分野において,日焼けやシミなどの予防に関する関心が高まりつつある。スマートフォンやウェアラブル機器などで紫外線が簡単に計測できれば,健康管理や美容医療への貢献が期待される。また,産業分野においてもUV硬化装置やUV硬化インクを使った印刷機などの紫外線を扱う機器が増えており,見えない紫外線を計測するニーズが高まりつつある。
今回,シミやしわの原因となるUV-Aから,日焼けの原因となるUV-Bまでを,シリコン半導体で計測することを可能にした。小型の透明樹脂パッケージを採用し,ウェアラブル機器での計測が可能になり,誰でも紫外線を簡単に確認できることが期待される。エスアイアイ・セミコンダクタでは 2018年春に量産製品の出荷を計画しているという。