北海道大学,中国香港城市大学,米アルゴンヌ国立研究所,オーストラリア原子力科学技術機構は共同でアモルファス合金(金属ガラス)のナノスケールの構造変化をその場観察し,示差走査熱量測定における異常発熱のピークが過冷却液体領域に潜在しているアモルファス相であることを初めて解明した(ニュースリリース)。
アモルファスの示査走査熱量測定におけるガラス転移温度と結晶化温度の間のブロードな異常発熱ピークはこれまで多くの金属ガラス材料において報告されてきたが,最良のガラス形成合金であるPd-Ni-P金属ガラスの40年に及ぶ長い研究の間においても,この異常発熱の要因は謎とされてきた。
そこで,研究グループは共同で,大型の研究施設(シンクロトロン放射光,原子炉小角中性子散乱,超高圧電子顕微鏡)の異分野の量子ビームを駆使し,昇温中のアモルファス合金のナノスケールの構造変化をその場観察し,示差走査熱量測定における異常発熱のピークがPd-Ni-P合金の過冷却液体領域に潜在しているアモルファス相であることを初めて解明した。
異常な発熱ピークは,2つの過冷却液体間のポリアモルファス相転移に起因し,Medium Range Order(中距離規則性)の18Åもの大きさの原子クラスターの充填の変化を伴うことが分かった。更に温度が上昇すると,アモルファス合金は,急冷時に室温ガラス相を形成する過冷却液体相に再び入ることも明らかになった。
この研究成果は,熱処理による金属ガラスの構造操作により新奇材料開発への道を示すもの。また,これを契機に国際共同研究のより一層の推進や本学の超高圧電子顕微鏡の国内外への共用利用が促進するものとしている。