京都大学を中心とする国際研究チームは,世界各地で調査された数百種類の植物に関する研究結果を集約・精査し,光合成効率と寿命が両立しないメカニズムを世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。
植物は一般的に,長生きの葉ほど厚く,光合成を行なう組織もたくさん持っているが,光合成速度は高くない。つまり「長生きの葉ほど光合成の効率が低い」といえる。これは世界共通のルールだが,その原因は謎のままだった。
京国際研究チームは,世界各地で調査された多種多様な植物に関する研究結果を集約・精査し,長い寿命に必要な丈夫な構造や細胞壁が,光合成の効率を低下させるメカニズムを世界で初めて明らかにした。
長寿命の葉は,細胞壁が多いために,より多くの養分が細胞壁に分配され,光合成を行なうのに必要な光合成タンパク質への分配割合が低下すること,そして,細胞壁が厚いことにより,葉緑体への二酸化炭素供給の効率が低下し,光合成効率が低下することが分かった。
これは丈夫な構造と,効率的な光合成システムは,両立できないという結論を示すもの。植物の進化の歴史において,光合成の効率をあげるか,長生きするか,という自然選択が働くことにより,短期間で高い光合成を行なう短命な植物(草など)と,光合成効率は低いが長生きする植物(常緑樹など)に,分化してきたと考えられるという。
葉の形質多様性の原理を明らかにしたこの研究は,植物の多様性を理解することに役立ち,また植生の変化予測や,植物育種における基礎的知見として役立つとしいている。