英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは,ハッブル宇宙望遠鏡で発見された銀河A2744_YD4をアルマ望遠鏡で観測し,この天体までの距離が132億光年であることを突き止めた(ニュースリリース)。
この天体は,手前にある銀河団の重力レンズ効果によって増光されており,銀河の光や電波を詳しく分析するには適しているという。
今回の観測で,この銀河に含まれる塵が放つ電波が検出された。さらに,同時に取得されたデータの中に酸素が放つ電波も発見した。この電波は,もとは電離された酸素が放つ波長88㎛の赤外線だが,宇宙膨張にともなって波長が伸び(赤方偏移),波長830㎛(0.83㎜)のサブミリ波となって届いたもの。
この赤方偏移から,A2744_YD4までの距離は約132億光年と計算された。これは,塵や酸素が検出された最遠方記録であった131億光年からさらに1億光年記録を更新する結果となった。
この観測結果を確かめるために,欧州南天天文台の大型光学赤外線望遠鏡VLTを用いて、A2744_YD4を観測した。その結果,この銀河に含まれる水素が放ったと思われる光を検出することに成功した。この光の赤方偏移を計算したところ,アルマ望遠鏡と同じ結果が得られ,この銀河が132億光年先に存在していることが確かめられた。
また,検出された塵の総量と推定される星の誕生のペースをもとに,この銀河では134億年前から活発な星形成活動が始まったと考えられるといい,これは宇宙最初期の銀河における星の誕生を調べる重要な手がかりを得たことを意味するとしている。