東北大学と日本軽金属は,低ヤング率であり優れた成形性が期待されるAl-Ca合金のヤング率が加工・熱処理で変化するメカニズムを解明した(ニュースリリース)。
実用Al合金はFe,Si,Cu,Mg,Mn,Zn等の元素添加,冷間・熱間加工,熱処理により求められる機械的特性(強度,伸び等)を制御しているが,ヤング率については68〜72GPaとほぼ一定。
一方,Al-Ca合金は内在する金属間化合物Al4Caが非常に低いヤング率(E=20GPa)であるため合金としても低ヤング率であり,高成形性材料として期待されている。しかし,熱間・冷間加工,熱処理でヤング率が変化するため低ヤング率材として実用化には至っていなかった。
今回,X線回折装置を用いて熱間・冷間加工前後,熱処理前後でAl4Caの結晶構造が可逆的に変化(マルテンサイト変態)することを確認した。すなわち,Al-Ca合金の加工・熱処理によるヤング率の変化はこのAl4Caのマルテンサイト変態に起因すると考えられるという。よって,この変態の制御によりAl-Ca合金のヤング率制御が可能となった。
また,強度向上のためヤング率に影響を及ぼさないFeを添加することでAl-Ca合金の実用化の目途が立った。用途としては寸法精度の厳しい電子機器材料,また超塑性による高成形性材料等が期待されるとしている。