東大ら,地上部を失った植物が根で光合成を始めることを発見

東京大学と理化学研究所らの共同研究グループは,モデル植物のシロイヌナズナを用いた研究により,地上部(葉と茎)を失った場合,植物は傷害応答因子を介して植物ホルモンであるサイトカイニンの応答を高め,根における光合成能力を向上させることを明らかにした(ニュースリリース)。さらに,この応答に葉緑体の発達に関わる転写因子が深く関与することも突き止めた。

色素体は植物に特有の細胞内小器官であり,細胞ごとにさまざまな役割を担い,多様な細胞の機能を支えている。なかでも光合成を担う葉緑体は植物の成長に必要不可欠だが,その発達が組織や細胞の機能に応じてどのように制御されるのかはよく分かっていなかった。

通常,根はエネルギー源を地上部が行なう光合成に頼っているが,地上部を失った際には植物ホルモンのバランスを変えることで組織の再生を促すとともに,葉緑体の発達や光合成の活性化を促進し,生き残る可能性を高めていると考えられる。この研究は,植物が環境に柔軟に適応しながら光合成による生産性を維持・拡大するしくみの解明に大きく貢献するもの。

植物の多様な生存戦略の理解が深まるだけでなく,将来的には植物の生産性の向上につながることも期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 公大ら,光阻害の修復速度と気温との相関を明らかに 2024年11月29日
  • 東北大ら,光合成を最適化するイオン輸送体を解明 2024年11月12日
  • 【解説】動物細胞ながら,光合成もできるプラニマル細胞とは 2024年11月11日
  • 帝京大ら,緑藻の群体増殖には光照射が必須と解明 2024年10月04日
  • 早大ら,光合成微生物で培養肉向け細胞培養機構開発 2024年10月04日
  • 東薬大,シアノバクテリアのストレス順応応答を発見 2024年10月03日
  • 公大,藻×酵母の光合成を利用した排水処理に知見 2024年10月02日
  • 公大ら,人工的な光合成アンテナの構造解析に成功 2024年10月01日