東大ら,地上部を失った植物が根で光合成を始めることを発見

東京大学と理化学研究所らの共同研究グループは,モデル植物のシロイヌナズナを用いた研究により,地上部(葉と茎)を失った場合,植物は傷害応答因子を介して植物ホルモンであるサイトカイニンの応答を高め,根における光合成能力を向上させることを明らかにした(ニュースリリース)。さらに,この応答に葉緑体の発達に関わる転写因子が深く関与することも突き止めた。

色素体は植物に特有の細胞内小器官であり,細胞ごとにさまざまな役割を担い,多様な細胞の機能を支えている。なかでも光合成を担う葉緑体は植物の成長に必要不可欠だが,その発達が組織や細胞の機能に応じてどのように制御されるのかはよく分かっていなかった。

通常,根はエネルギー源を地上部が行なう光合成に頼っているが,地上部を失った際には植物ホルモンのバランスを変えることで組織の再生を促すとともに,葉緑体の発達や光合成の活性化を促進し,生き残る可能性を高めていると考えられる。この研究は,植物が環境に柔軟に適応しながら光合成による生産性を維持・拡大するしくみの解明に大きく貢献するもの。

植物の多様な生存戦略の理解が深まるだけでなく,将来的には植物の生産性の向上につながることも期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 岡山大ら,光合成タンパク質で高温に強い植物を創出 2025年04月16日
  • OIST,バクテリアが光合成以前に酸素利用の痕跡発見 2025年04月09日
  • 名大,長い日照で開花と茎伸長が促進する機構を発見 2025年04月02日
  • 東大,強光でも生産性を高める光合成促進剤を発見 2025年03月05日
  • 筑波大,極限環境で生存する光合成細菌に知見 2025年02月14日
  • 岩手大ら,針葉樹の光合成CO2固定酵素の特性解明 2025年01月31日
  • 工繊大ら,大気汚染改善で街路樹の光合成増を確認 2025年01月21日
  • 東大ら,海洋プランクトン光共生の進化史を解明 2025年01月21日