京大,幾何光学によるガンマ線画像化法を発見

京都大学の研究グループは,ガンマ線を幾何光学に基づき定量的に画像化する手法を発見し,福島地域におけるガンマ線観測でその実証に成功した(ニュースリリース)。

核ガンマ線は放射性同位体から放射されるガンマ線で,放射線の発見から百年以上経つ今も画像化技術は不完全な状態にある。研究グループは,宇宙のガンマ線放射天体の謎を解明するため,ガンマ線と物質の相互作用を測定することで,一般的なカメラが光を捉えるのと同じようにガンマ線を捉えるガンマ線カメラ ElectronTracking Compton Camera(ETCC)を世界に先駆け開発・実証した。

研究グループは,電子の反跳方向の情報が画像化精度を決定する鍵と判断し,電子の反跳方向に感度を持ち得るガス検出器を独自に開発してきた。ガス検出器はベータ線のような荷電粒子には有効な検出器だが,物質量が小さくガンマ線検出には不利だと考えられてきた。

そこで研究グループは,微細加工技術を用いたガス検出器を開発し,ガンマ線毎の散乱現象を完全に解き,計算機上でレンズと同様に点としてガンマ線を集光させ画像を描くことに成功した。

開発したカメラの画像化法を用いると,光学カメラで光を定量的に画像化するのと同様にガンマ線の定量的な画像化ができる。このカメラを用いて福島の汚染地域の撮像試験を行なった際は,画像から地表面のセシウム量(ベクレル値)の分布を定量的に示すことができた。

この放射線強度からIAEAの基準に従って求めた地上の線量分布(μ㏜/h)は,撮像実験とは別に測定した線量計の結果と一致している。

ETCCはホットスポットの特定だけではなく,除染区域に残るマイクロホットスポットも検出可能。画像内の特定の場所のガンマ線エネルギースペクトルも測定できる為,多種の放射性同位体も同時に認識でき,光学カメラでいう所のカラー画像撮影できる。一般的な低放射線量環境でも,その数百分の1の微量放射線源分布の画像化が可能。

この原理を用いて,原子炉事故発生時の正確な放射線漏えい量の測定や,拡散モデル シミュレーションとの併用による放射線拡散予想が可能になるという。事故発生時に限らず,廃炉作業全般で必要となる建屋内の放射線分布の正確な測定や,高精度な解体の事前シミュレーションへの利用も考えられる。その他にも医療分野や非破壊検査など,放射線を利用する各分野への応用も期待されるとしている。

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