広島大学を中心とする研究グループは,すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC)を使った観測により,遠方宇宙で重い星形成銀河の割合が増加して行く姿を捉えた(ニュースリリース)。
約50億年前の遠方宇宙にある重い星形成銀河は,宇宙の大規模構造にそって存在していた。一方,約30億年前の比較的近い宇宙では,重い星形成銀河はほとんど見えない。研究では星形成銀河を含む質量分布図に影響しうるすべての種類の銀河の3次元分布を質量分布図と比べた。そしてこれまでとは違う手法で銀河進化の様子を明らかにした。
HSCは満月9個分の広さの天域を一度に撮影できる世界最高性能の超広視野カメラ。光センサーは高感度CCDで,合計約8億7000万画素を有する。CCDは真空容器に封入され-100度に冷却されている。第一レンズの直径は約82cmで,レンズ筒の長さは165cmある。
今回の観測により,遠方の宇宙では,今まで無視されてきた星形成銀河が重要な役割を果たすことが新たにわかった。HSCで得られた質量分布図の中にはさらに遠方の宇宙における情報も含まれていると考られるという。
今回の成果は,星形成銀河が宇宙の物質分布をなぞる様子が変化したことを,宇宙の物質分布と銀河の分布を直接比べて明かした初めての例であり,他の独立な研究で明かされている銀河進化の様子ともよく一致している。
現在開発中のすばる望遠鏡次世代主焦点多天体分光装置Prime Focus Spectrograph(PFS)が完成すれば,より遠方の銀河を一度にたくさん分光することができる。HSCとPFSのデータを組み合わせることで,星形成活動が活発だった時代の暗黒物質と星形成銀河の様子の解明を目指すとしている。