近畿大学は,ゲーム機「Xbox One」等で動体センサーとして使用されるマイクロソフト社の赤外線深度画像センサー「Kinect Sensor」(Kinect)を用いたドラム練習支援システム「D-Learning(ディーラーニング)」の開発に成功した(ニュースリリース)。
スポーツやストレッチなどでは,競技の上達や運動効果の向上のために,自分の動作が適切であるかを客観的に判断することが重要となる。研究グループは,これまでに,画像センサーを用いて,シンプルな足・腰の上下運動を伴う「スクワット」における正しい動作を分析し,アドバイスするシステムを開発・研究してきた。
今回は,複雑な動作を必要とするドラム演奏において,客観的に演奏フォームを分析できるドラム練習支援システム「D-Learning」を開発した。これにより,自主練習時においても,誤った動作の反復で上達が阻害されることを防ぐことができるという。
このシステムでは,人の関節位置の認識・追従が可能な「Kinect」を利用した。これを用いることで,運動センサーなどの装置を身体に装着することなく,模範となる演奏者の動作データの記録や練習時の動作の比較・分析が可能。身体の部位ごとに色分けされたマーカーを確認することで,修正が必要な各部位の動きをピンポイントで把握することができる。
この「D-Learning」は,特定の部位だけでない複数部位の動作を記録し,総合的に動作データを分析することが可能。そのため,ドラム演奏に限らず,スポーツなどの身体全体を動かす様々な行為の学習支援システムとして応用ができるとしている。
画像センサーの動体認識においては動作のブレ(ノイズ)が生じるが,センサーから出力された数値(空間座標)を平均化した動作データを記録する「ノイズフィルター機能」を実装することで,これによる誤判定を防いでいる。同大のオープンキャンパスで実施した過去2回の体験デモでは,小中高生125人が参加し,概ね良好な評価を得ている。
この研究では「演奏動作を真似ること」を学習目標として想定しているため,全関節の動作が熟練者の動作と完全に一致していることを目指した。しかし,実際のドラム演奏では,各部位の動きが異なっていても,良い演奏(正しいリズム・適正な強弱での発音)となる可能性もある。そのため,動作データだけでなく,リズム情報等を新たに取り入れ,各関節の動作の改善が良い演奏に繋がっているかの検証を目指す。さらに,ドラム演奏だけでない,動作を真似ることで上達するスポーツなどの幅広い運動分野への応用を目指す。