名古屋大学の研究グループは,4Kディスプレーや太陽電池に応用されている最先端量子ドット技術を駆使して,iPS細胞等の幹細胞に対してより安全な量子ドットZnS-ZAIS-COOH(ZZC)を開発した(ニュースリリース)。またこれを用いて,マウス生体内の移植幹細胞をイメージングすることにも成功した。
幹細胞やiPS細胞から分化誘導による細胞移植治療が実用化に向けて開発が進められている。このとき,安全性を確保し,治療効果を最大限に引き出すためには,移植幹細胞の生体内動態や集積組織・臓器を正確にイメージングすることが必要になるが,その技術は現状確立されていない。
研究グループでは,従来の蛍光プローブとは異なり,4K・8Kディスプレーや太陽電池に利用されている最先端量子ドット技術を応用し,iPS細胞等の幹細胞に対してより安全な量子ドットZnS-ZAIS-COOH(ZZC)を開発した。ZZCは,カドミウム等の毒性成分を含まないため,従来の量子ドットと比較して細胞毒性が100分の1程度に大きく低減され,且つ,低コストでの大量生産も可能。
この量子ドットZZCを用いることで,より安全な幹細胞標識に加え、高感度な生体内の移植幹細胞イメージングを実現することができた。これにより,多くの幹細胞を標識して追跡する必要がある前臨床試験での利用が,低コストで可能となり,今後の再生医療の実現・加速に大きく貢献できると期待されるとしている。