日本電信電話(NTT)は,名古屋大学と住重試験検査(SHIEI)と共同で,一般企業で保有可能なレベルの小型加速器中性子源を用いて,宇宙線に起因する電子機器の誤動作(ソフトエラー)を再現して試験可能であることを実証し,試験方法を確立した(ニュースリリース)。
半導体デバイスの高集積化・微細化に伴い,デバイス内でビットを判定するのに必要な電荷は減少傾向にある。そのため,宇宙線由来の中性子線によって発生する二次粒子の微小な電荷の影響を受けやすくなり,従来の電子機器に比べソフトエラーの発生確率が増加しつつある。
共同実験は,SHIEI所有の小型加速器中性子源を用いて,(1)ソフトエラーの再現,(2)ソフトエラー再現時間の大幅な短縮,(3)中性子線照射エリアの制御を目的にソフトエラー試験照射系を構築し,実験を行なった。この試験系は,サイクロトロンによってソフトエラー試験を実現可能とするエネルギーである加速された18MeVの陽子をベリリウムターゲットに照射することにより,中性子を発生する。
その結果,SHIEI所有の小型加速器中性子源でソフトエラーを再現できることを確認した。また,この加速器では,中性子発生源の近傍で試験をすることにより,従来方式に比べてソフトエラーを再現する時間を最大で1/100に短縮した。これは,自然界に対して約1億倍での加速に相当し,この倍率は任意に調整できることを確認した。
今回,システム内の特定のLSIに照射したい場合やシステム全体に照射したい場合に対応するため,照射エリアの制御ができることを確認した。具体的には,数cm程度の特定箇所のみへの照射,約50cm×50cm程度の広い範囲への照射の両方で試験ができることを確認した。
この結果をもとに,NTT-ATは,試験対象の電子機器に中性子を照射し,発生するエラーを判定することにより,実環境におけるソフトエラー耐力を測定する試験サービスを2016年12月19日からが提供する。