阪大,5色の高光度化学発光タンパク質を開発

大阪大学の研究グループは,2012,2015年に開発した化学発光タンパク質Nano-lantern(ナノ・ランタン)を改良して,明るさを2倍から10倍向上させた5色の化学発光タンパク質の開発に成功した(ニュースリリース)。

今回,酵素活性の高い化学発光タンパク質と5種類の異なる蛍光タンパク質をハイブリッド化することにより,従来のものより2倍から10倍明るく,水色,緑色,黄緑色,橙色,赤色に発光するタンパク質enhanced Nano-lantern(増強型ナノ・ランタン)を開発した。

5色の増強型ナノ・ランタンが完成したことにより,細胞内の5つの微細な構造を同時に計測することに成功した。また,増強型ナノ・ランタンを用いることで,1個単位のタンパク質分子の結合・解離を化学発光で検出することに世界で初めて成功した。

これまで,このような計測は蛍光タンパク質を用いて真夏の日光の何倍もの強度の光を照射しながら行なわれており,自家蛍光や光毒性の影響が問題になっていた。増強型ナノ・ランタンは,外部からの励起光を必要としないため,自家蛍光や光毒性の影響を全く受けない。

さらに,増強型ナノ・ランタンを改変して細胞内カルシウムイオンを検出できる化学発光型センサーも開発し,iPS細胞由来の心筋細胞で60枚/秒という高速度で長時間にわたってイメージングすることにより,忠実なカルシウムイオン動態の計測にも成功した。

中でも高光度かつ組織透過性に優れた増強型ナノ・ランタンの赤色変異体は,体の深部にあるシグナルを体外から感度良く観察することができる。従って,がん幹細胞などの体外からの観察が可能になるため,多くの疾病の原因究明やより効果的な創薬スクリーニングが期待されるという。

これら化学発光型センサーは,細胞をより生理的な状態で実時間計測することを可能にし,生命科学研究のみならず,医学・薬理学研究に大きな貢献が期待されるものだとしている。

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