理化学研究所(理研)の研究グループは,青色光受容体のクリプトクロムが植物の細胞伸長を抑制する効果を阻害する低分子化合物を単離し,それが直接クリプトクロム1(CRY1)に結合することで阻害効果を示すことを明らかにした(ニュースリリース)。
光は,植物の光合成によるエネルギー源であるだけでなく,環境の情報を感知するための情報源としても重要な役割を担っている。クリプトクロムは,植物が持つ光受容体の中で青色光を受容して,脱黄化,気孔の開閉,開花時期,避陰反応を制御するタンパク質。この受容体の作用を制御することができれば,これら種々の反応の制御が可能になる。
今回,研究グループは,青色光が芽生えの細胞伸長を抑制することに着目した。モデル植物のシロイヌナズナの芽生えを用いて,この抑制効果が起こらなくなる低分子化合物を約4,000の中から探し出し「3B7N」と名付けた。この化合物は,青色光のみの影響を抑制し,赤,遠赤色光には影響を及ぼさないことが分かった。
また,3B7Nを結合したビーズとタンパク質とのプルダウンアッセイを行なった結果,3B7NがCRY1のみと結合し,以前報告したBIC2(CRY2の情報伝達を抑制する)のような青色光シグナルに関わるタンパク質とは結合しないことが明らかになった。
つまり,3B7NはCRY1に特異的に結合することで,CRY1が制御する青色光特異的な芽生えの伸長成長阻害を回避していることが分かった。
クリプトクロムは植物の生長,開花などの農業上の重要形質を制御しており,この成果は作物のバイオマス増収などにつながると期待できるとしている。