愛媛大学の研究グループは,地球マントルの主要鉱物であるとともに,レーザー発振素子など光学材料としても重要であるガーネット(ざくろ石)の透明ナノ多結晶体の合成に成功した(ニュースリリース)。
酸化物などの微細な結晶を焼き固めたセラミックスは,古くから陶器やレンガ・瓦など様々な利用がされてきた。通常のセラミックスは不透明だが,近年,光の散乱・吸収源となる空孔や不純物のないセラミックスが開発され,「透明セラミックス」として,レーザーや光学レンズなどに応用されている。
従来の透明セラミックスは,通常1ミクロン~0.1ミリ程度の結晶の粉末を,大気圧下で焼き固めた(焼結)ものだが,結晶のサイズをこれより更に小さくして,0.1ミクロン(100㎚)以下の「ナノサイズ」にすると,セラミックスの透明性が向上するとともに,硬さも増す「透明ナノセラミックス」ができるのではないかと予想されていた。
研究グループは,棒状に加工したガラス試料に,マルチアンビル超高圧合成装置を用いて,10万気圧以上の超高圧と,1400℃程度の温度を加えることにより,透明ナノセラミックスの一種である「透明ナノ多結晶ガーネット」の合成に,世界で初めて成功した。
得られたナノ多結晶ガーネットは,大きさ30㎚程度の超微細結晶からなり,宝石などに使われる単結晶ガーネットと同程度の透光性とともに,約30%高い硬度を有することも明らかになった。
研究グループは,今回開発された超高圧合成法を用いることにより,新しい透明ナノセラミックスの開発と,そのレーザーや光学素子などへの応用も期待されるとしている。