東芝,磁化反転不揮発性磁気メモリに新書込み方式

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究開発プログラムの一環として東芝は,電圧書込み方式の不揮発性磁気メモリの新たなアーキテクチャ技術を開発した(ニュースリリース)。

スピントロニクス分野では,磁石の磁化が持つ不揮発性記憶機能を利用した待機電力ゼロの不揮発性磁気メモリMRAMの開発が精力的に行なわれている。現在,電流駆動書込み方式のMRAM(STT-MRAM)が低消費電力の不揮発性磁気メモリとして期待されている。しかし,この方式は電流駆動のため,動作時の消費電力の低減には限界があった。

一方,数ナノ秒の電圧パルスによる磁化反転の制御を使う電圧駆動MRAMは,1)原理的に電流が不要,2)数ナノ秒の高速動作,3)高い耐久性,4)室温での動作可能,などの特長がある。STT-MRAMに比べて,一層の低消費電力化が可能で,電圧駆動となるためトランジスタサイズを小面積にすることができる。

今回,データの書込み技術に,開発した2つのスピントロニクスの物理原理(VCMA効果とスピンホール効果)を利用した電圧書込み方式の不揮発性磁気メモリの新たなアーキテクチャ(VoCSM:Voltage-Control Spintronics Memory)を用いた。

VCMA効果にスピンホール効果を重畳させる書込み方式を用いることで,書込みエラー率を大幅に低減できる可能性を初めて示した。また,今回あみだした独自の書込みシーケンス(Voltage-Control Flash 書き込み:VoCF書込み)を用いた実装評価素子により,複数ビットを一括で書込めることも実証し,これにより書込みの際(動作時)に消費する電力を一桁低減できる可能性を示した。

なお,この発表の新たなメモリアーキテクチャは,実質三端子構造をとるが,その欠点であるフットプリントの増大に対しては,複数のMTJ記憶素子を1つのストリング(糸紐)上に配置する数珠つなぎ構造(String構造)とすることで,この欠点を回避した。

今回新たに開発した,MRAMメモリのアーキテクチャおよび一括書込み方式を実用化につなげるためには,10nm台サイズの微細なMTJ素子を用いたスピントロニクス物理原理の効率向上を図る必要がある。なかでも,VCMA効果をさらに一層高めたMTJメモリ素子や材料技術の開発が必要となるという。

今後は,ImPACTのプログラムにおいて,産業技術総合研究所,物質・材料研究機構,東北大学との連携を強化して,この課題の解決に取り組むとしている。

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