東大ら,3Dプリンターで空間の物理量を可視化

東京大学と,計算化学分野の自社ソフトウェア開発・販売を行なうクロスアビリティは,3Dプリンターを用いて,空間に分布する物理量(例えば密度,温度,電場,磁場,流速,強度など)を透明樹脂の中に形状制御された微少粒子(ドット)で描写する技術を開発した(ニュースリリース)。

分子構造と分子機能の関係を検討する場合,分子を構成する原子間の結合を担う電子密度分布(電子雲)が重要なカギを握るため,より電子の役割の理解を深めるためには電子雲を描写した分子模型を製作することが理想的となる。

従来,分子模型は原子間結合を棒形状で示すボールスティックタイプが主として用いられており,電子密度分布と結合や機能の関係を理解することが困難だった。また,ガラスの中にレーザーダメージでドットを形成し,電子雲を描写する技術が開発されているが,ドットの形状や色の制御ができず,課題が残っていた。

今回,開発したプログラムを用い,コンピューターで計算した分子を構成する原子間の結合を担う電子密度分布のデータを,ドットデータに変換した。このデータをインクジェット型3Dプリンターに入力することで,透明な樹脂の中に電子雲を描写した分子模型の制作が可能となった。

この分子模型により,分子中の電子状態の理解が深まり,電子が関与する新機能分子の開発等に役立てることが可能となる。さらに,電子雲を含む分子模型を教育ツールとして利用することで,モニター上だけで表示するのに比べ,物質の構造や機能と電子密度の関連の理解を深めることが可能となる。

また,この技術は,分子以外に雲,銀河,建物や車の周囲の気流などを描写することも可能であり,幅広い領域での応用が期待されるとしている。

尚,11月30日から,クロスアビリティにおいて,この技術(特許出願済) を適用した分子模型の制作の受注を開始する。

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