浜松医科大学,浜松医療センター,および浜松ホトニクスの研究開発チームは,急性期脳梗塞の血栓に対しレ ーザーを照射して溶解し,閉塞血管の血流を再開通させるレーザ血栓溶解治療システムを開発した(ニュースリリース)。
12月1日より,浜松医療センターにてこのシステムを用いたレーザ血栓溶解治療法の安全性および有効性を確認する医師主導治験を開始する。
脳梗塞は脳の血管が閉塞することにより片麻痺をはじめとする様々な症状を呈する疾患。後遺症により寝たきりの状態や要介護となる原因の第1位とされ,急性期にいかに障害を軽くできるかが治療の鍵となっている。
時間の経過とともに状態が変化している急性期脳梗塞における治療法は,発症後4.5時間以内であれば,アルテプラーゼの静脈投与による血栓溶解療法が標準の治療法として広く認められている。しかしアルテプラーゼの投与で脳主幹動脈の血流が再開通しない場合や,発症から4.5時間を過ぎている場合には,ほかの方法による血栓除去が必要となる。
現在では主に,機械的な血栓除去カテーテルが用いられている。ただし,この方法は血管内皮損傷や脳出血などの可能性があるため,研究開発チームは,血管内皮を損傷することなく血栓を選択的に溶解するこのシステムの開発を進めてきた。
今回,血栓のみを選択的に溶解し,血管内皮に損傷がほとんどない波長532nmのレーザー装置と,血管を閉塞している血栓にレーザーを有効に照射するための光ファイバーを内包した専用カテーテルを開発した。
このカテーテルは通常のマイクロカテーテルとほぼ同様の形状および操作性のため,造影剤を注入する診断用カテーテルの内部を通過させることができ,診断に引き続いて直ちに血栓溶解治療を行なうことができる。また,従来の機械的な血栓除去カテーテルと異なり,カテーテルが血栓を通過する必要がなく血栓の手前からレーザーを照射するため,カテーテルが血栓奥の血管を損傷することもない。
さらに,レーザーで溶解された血栓断片は10μm以下となるため別の部位で再度血管閉塞を起こす可能性が低く,かつ体内の線溶系による自然溶解が期待できるなどの利点があり,安全性が高い。研究開発チームはさまざまな動物モデルにこのシステムを用いた本治療法を適用し,安全性および有効性を確認してきた。
研究開発チームは,この治療法が実際の患者においても安全かつ有効であることが確認され,急性期脳梗塞の機械的血栓除去に使用すべき第一選択の治療法となることを期待しているとしている。