国立天文台ら,太陽に謎の超音速現象を発見

著者: sugi

国立天文台,JAXA宇宙科学研究所,NASA,仏天体物理宇宙研究所,カナリー諸島天文研究所は,太陽観測ロケットCLASP(Chromospheric Lyman-Alpha SpectroPolarimeter)にて太陽彩層の詳細な観測を5分間にわたって行なったところ,太陽の2次元画像から,わずかに明るい構造が毎秒150km~350kmという超音速で伝播するという現象を発見した(ニュースリリース)。

CLASPの主な目的は,ライマンα線(121.567nm)の偏光を観測することで,太陽表面とコロナをつなぐ彩層・遷移層の磁場を計測することにある。これは世界初の試みで,CLASPは彩層・遷移層の磁場を計測するための新しい観測手法と技術の検証・確立を目指している。

地球大気によるライマンα線の吸収を避けるために,NASAの観測ロケットにCLASPを載せてアメリカ・ホワイトサンズの実験場から宇宙空間に打ち上げ,CLASPが宇宙空間から大気圏内に落ちてくる約5分の間に太陽の縁付近を観測した。CLASPのメインの装置は偏光分光観測装置だが,この研究成果はそれを補助するための撮像装置を用いて得られた。この撮像装置は,国立天文台を中心に,JAXA宇宙科学研究所や米国NASAと共同開発したもの。

偏光分光観測装置では,スリットに沿った空間情報しか得ることができない。したがって,ロケット飛翔中の観測ターゲットを選択するために,リアルタイムで太陽の2次元画像を高速で提供することが,撮像装置の最も重要な役割となる。CLASPの撮像装置は,空間解像度は既存の衛星観測装置と比べて高いわけではないが,0.6秒に一枚の彩層画像を取得するという高い時間分解能を持つ。また,高い感度により微弱な光の変動でも検出できる。それらの特徴を生かして,まだ見ぬ高速・高頻度現象の発見に挑戦した。

その結果,常に変動し続けている太陽の姿が浮かび上がった。さらに,一本の明るい筋構造に着目すると,明るさの変動が繰り返し筋構造に沿って移動していくことが分かった。明るさの変動が伝わる速度は毎秒300km程度で,少なくとも同じ領域で4回同じ現象が起きていた。このような,明るさの変動が繰り返し高速で伝播する現象は,わずか5分間の観測期間で,非常に明瞭な物だけでも20か所で起きていた。

比較的強い磁場が集中している領域だけでなく,その外の領域でも観測されており,太陽彩層ではいつでもどこでも起きている現象であることが分かった。明るさの変動が伝わる速度は,毎秒150km~350km程度で,太陽彩層の音速(~毎秒20km)と比べ10倍近く速い。また,磁場が集中する領域から明るさの変動が伝わる傾向にあることもわかった。

これまでも超音速の現象が彩層で発見されてきた。しかし,今回の発見は今まで観測されている彩層の超音速現象と比べても速度が大きく,非常に短い時間で起きる現象であり,この現象が何であるかはまだ分かっていないが,磁場に関係する波動現象ではないかとしている。今後,CLASPの再飛翔に向けてさらに研究を進めていく予定。

また,「ひので」衛星等と比べて圧倒的に小規模な撮像装置でも,一芸に秀でることで興味深い発見を得られたことは,観測ロケット実験や気球実験といった小型の飛翔体観測を今後推進していく上でも重要な成果だとしている。

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