大阪大学の研究グループは,従来技術に比べて,金属粉末と熱源(レーザー)のコントロールが容易で,微細な積層や熱影響が問題となる薄板への積層や,AM(Additive Manufacturing)加工ヘッドを旋回させた5軸自由曲面コーティング積層に適したマルチレーザー式金属積層(Multi-laser Metal Deposition:M-LMD)技術」を開発した(ニュースリリース)。
これまでのLMD技術は,レーザー加工ヘッドの中心からレーザーを照射することにより母材表面に溶融池を形成し,また金属粉末をレーザー光周囲からその溶融池に供給することにより,溶融金属が厚膜を形成し積層を造形することを可能としている。
しかしながら,これまで加工ヘッドから噴射される金属粉末が微細かつ軽量なため,風圧などの外乱により溶融池に粉末が効率良く供給されないという課題があった。また,部品母材が薄い場合,LMD技術では大きな溶融を形成することにより部品母材自体が大きな熱影響を受けてしまう可能性があった。
そこで研究グループは,新たにAM加工ヘッドを開発した。複数のレーザー光が集光点に向かって加工ヘッド側方から照射され,粉末材料は加工ヘッド中心から供給される構造(一般的なLMD技術とは,レーザー光と金属粉末の供給位置関係が反対)を実現した。
この構造により,加工ヘッド中心から噴射される金属粉末は部品母材に到達する前にレーザーにより溶融され,部品母材への熱影響を極力低減させ,高効率かつ高精度な金属積層造形が可能になる。
今回開発したM-LMD技術では,金属粉末供給口が一つというシンプルな構造であるため,AM加工ヘッドを旋回させても金属粉末が受ける重力方向の変化による影響が少なく,加工点へ安定した金属粉末供給が可能であり,従来と比べ金属粉末と熱源のコントロールが容易となり,この加工ヘッドを搭載することで,5軸自由曲面での積層を実現した。
この研究成果により,部品の強度や耐久性を向上させる金属コーティングへの適用や高価な部品の部分補修,微細形状の部分的な積層造形など,航空・宇宙・油井産業等に必要な加工部品への応用が期待されるという。
この研究成果を搭載した工作機械は,2016年11月17日(木)から22日(火)まで東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催される第28回日本国際工作機械見本市JIMTOF2016にて,ヤマザキマザックのブースで「INTEGREX i-200S AM (M-LMD仕様)」として公開・展示される。
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