東芝と英国通信会社BTは,英国で初めての量子暗号通信の顧客向け展示コーナーを英国イプスウィッチのアダストラルパークにあるBTの研究所内に開設する(ニュースリリース)。
最新のサイバーセキュリティ技術として,銀行等においてやり取りされるデジタル情報のハッキングを防ぎ,安全な金融取引を行うための量子暗号通信の利用方法を展示する予定。
量子暗号通信では,光ファイバー上で暗号鍵を光子を用いて転送する。光子は第三者が盗聴を試みた瞬間にその符号が変化し検知されるため,絶対安全性が保証される。量子暗号通信により,金融取引の場面では,個人情報や生体認証データ,銀行の取引証明などの機密情報を,銀行の支店と離れた場所にあるデータセンター間で安全に送信することが可能となる。
郊外のデータセンターは,金融業界では一般的になってきており,デジタル通信のインフラ上で安全に個人や銀行の情報を伝送することが喫近の課題となっている。この展示コーナーでは,こうした課題に対し,金融業界に限らず様々な産業領域における,最新のサイバーセキュリティ技術のメリットを展示する。
BTと東芝の開発したシステムでは,2地点間のデジタル暗号鍵の作成に量子暗号を利用し,生成された暗号鍵はサイト間を流れる機密情報の暗号化や認証に利用される。暗号鍵の生成に利用される光子信号は,暗号化される銀行のデータと同一のファイバー上で送信可能なため,通信インフラに要求されるコストが大幅に削減されるとしている。
また,両社は,東芝欧州研究所傘下のケンブリッジ研究所において,量子暗号通信を光ファイバー通信ネットワークに統合する技術開発で協力し,2014年に10Gb/s,および2015年に100Gb/sのデータ信号を運ぶファイバー上で量子暗号鍵を伝送することに初めて成功している。
BTと東芝欧州研究所は,英国における量子通信ネットワーク(“UK Quantum Network”)を構築するプロジェクトでも協力している。この取り組みは,英国において2億7千万ポンドが投じられている量子技術プログラムの一部で,ケンブリッジ,ブリストル,ロンドン,アダストラルパーク間の量子暗号による安全な通信の実現を目指すもの。アダストラルパークとケンブリッジサイエンスパークの間を接続する回線は,2017年はじめに完成する予定。