東大ら,生体外から光を当てて遺伝子をコントロール

東京大学と米コロンビア大学の共同研究グループは,微弱な光や短時間の光照射でもDNA組換え反応を極めて高い効率でコントロールできる技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

近年,生体での遺伝子のはたらきを解明するための技術として,化合物や光を使ったDNA組換え技術に期待が集まっているが,光を利用した従来の技術はいずれもDNA組換え効率が著しく低く,そのことが生体(マウスなどの動物個体)への応用の大きな妨げになっていた。

研究グループは,二分割して一時的に活性を失わせたDNA組換え酵素(Cre)に光スイッチタンパク質を連結し,光照射でDNA組換え反応をコントロールできる光活性化型Cre(“PA-Cre”と命名)を開発することに成功した。PA-Creは,従来の光遺伝学で使われている光の強さの10万分の1程度の微弱な光照射でも十分に機能し,高い効率でのDNA組換えを実現した。加えて,PA-Creを用いて,狙った場所でのみDNA組換えを起こせることも実証した。

従来の光遺伝学では,マウスなどの動物個体の生体深部に光を届けるために,細い光ファイバーを差し込んだり,小型LED装置をインプラントするなど,外科的侵襲を伴う方法が用いられてきた。今回,研究グループは,極めて高感度のPA-Creを開発することにより,わずか30秒程度という短時間の光照射を,しかも生体外から行なうだけで,生体深部でDNA組換え反応を誘導できることを実証した。

この新しい技術は,今後病因や疾患に関わるさまざまな遺伝子の機能解明に貢献すると共に,遺伝子組換え技術の応用可能性を大きく広げることが期待されるとしている。

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