東北大ら,スピン凍結状態のエネルギー構造を解明

東北大学,米バージニア大学,米テネシー大学らは共同で,スピン凍結状態中の記憶効果を詳細に調べる事によりフラストレート磁性体の示すスピンの凍結状態がランダム系のスピングラス状態とは本質的に異なるエネルギー構造を持つことを明らかにした(ニュースリリース)。

ランダム相互作用を持つ磁性体において磁気モーメント(スピン)が低温でランダムに凍結する現象(スピングラス)は古くから知られていた。一方で,磁気モーメント間の相互作用がフラストレートする磁性体においても低温でスピン凍結が見られることが近年の研究によって明らかになっていた。

研究では,両者の凍結状態における記憶効果を磁気測定および数値シミュレーションにより詳細に調べる事により,両者のエネルギーランドスケープの複雑さに本質的な違いが存在することを明らかにした。

今回の研究はランダム磁性体とフラストレート磁性体に見られるスピン凍結現象の本質 的な差異をエネルギーランドスケープの観点から示したものであり,スピン凍結現象の今後の研究に有為な知見を与えるもの。

さらに,複雑なエネルギーランドスケープは物性物理学の範囲を超え多くの複雑接続性の研究に普遍的に見られるものであるため,メモ リー効果からエネルギーランドスケープを探る今回の方法論はそれらの研究対象に対しても新しい手法を提供するものだとしている。

関連記事「理研,スピンアイスを冷却すると融解し仮想的な光子が出現することを発見」「名大ら,極低温まで軌道自由度が凍結しない銅酸化物を実現」「東大ら,スピン流で磁気揺らぎの高感度検出に成功

その他関連ニュース

  • 理科大ら,ベクトル光渦の空間構造をスピンに印刷 2023年03月27日
  • 北大,室温で高電圧動作が可能なスピンLEDを実現 2023年02月22日
  • 東大ら,新たな巨大スピン流発生材料の開発に知見 2023年02月15日
  • 原研ら,グラフェンと金の化学結合の形成機構を解明 2023年01月31日
  • 兵県大ら,希土類フリー酸化物で光スイッチング観測 2023年01月12日
  • 公大,実用的なスピン拡散長を持つ分子薄膜材料発見 2023年01月12日
  • 東大ら,FeSiで室温下の電流誘起磁化反転を実現 2022年12月21日
  • 立命大ら,荷電π電子系に新たな電子物性制御を実現 2022年11月17日