東北大ら,スピン凍結状態のエネルギー構造を解明

東北大学,米バージニア大学,米テネシー大学らは共同で,スピン凍結状態中の記憶効果を詳細に調べる事によりフラストレート磁性体の示すスピンの凍結状態がランダム系のスピングラス状態とは本質的に異なるエネルギー構造を持つことを明らかにした(ニュースリリース)。

ランダム相互作用を持つ磁性体において磁気モーメント(スピン)が低温でランダムに凍結する現象(スピングラス)は古くから知られていた。一方で,磁気モーメント間の相互作用がフラストレートする磁性体においても低温でスピン凍結が見られることが近年の研究によって明らかになっていた。

研究では,両者の凍結状態における記憶効果を磁気測定および数値シミュレーションにより詳細に調べる事により,両者のエネルギーランドスケープの複雑さに本質的な違いが存在することを明らかにした。

今回の研究はランダム磁性体とフラストレート磁性体に見られるスピン凍結現象の本質 的な差異をエネルギーランドスケープの観点から示したものであり,スピン凍結現象の今後の研究に有為な知見を与えるもの。

さらに,複雑なエネルギーランドスケープは物性物理学の範囲を超え多くの複雑接続性の研究に普遍的に見られるものであるため,メモ リー効果からエネルギーランドスケープを探る今回の方法論はそれらの研究対象に対しても新しい手法を提供するものだとしている。

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