京都工芸繊維大学は,容易に大面積化できる書き換え型マルチカラーホログラフィックディスプレイデバイスの開発に成功した(ニュースリリース)。
ホログラフィーは,物体や被写体からの情報を光の強度と位相の情報としてそのままの形で媒体に干渉縞として記録し,再生させる技法。再生光(読出し光)により再生される情報は元の物体からの情報そのままであるので,違和感なく自然に3D立体像として再生される。
しかしながら、これまでのホログラムは暗室で撮影され,その後写真と同様に暗室で化学反応を利用して現像や後処理がされており,大面積で明るい環境下で書き換えできるホログラム材料はほとんどなかった。
研究グループは,書き換え可能なホログラム材料の有力候補である有機フォトリフラクティブポリマーに注目。モノリシック化合物を用いて無電界下で数百ミリ秒オーダーの速さで書き換えができることを見出し,さらに科学的な修飾を行なうことで,書き換え型マルチカラーホログラムデバイスのプロトタイプの開発に成功した。
開発したのは,カルバゾールとアゾ基とを一分子内に有するモノリシック化合物を用いて物体や被写体からの3次元情報を干渉縞として記録し同時に再生し,さらに消去と同時に上書きする書き換え型マルチカラーホログラムデバイス。
モノリシック化合物をアクリル系ポリマーに分散させたホログラムデバイスを用いて,青色(488nm)のレーザー光の干渉パターンの明部でモノリシック化合物の光物理化学的な構造変化が瞬時に起こり,その部分に物体や被写体の3次元情報を干渉縞として記録すると同時に,赤色(632.8nm)および緑色(532nm)の読出し光により明るく再生できる。
回折効率は20%以上と高く,明るい書き換え型ホログラムを見ることができる。特段の消去プロセスなしでさらに別の物体や被写体からの3次元情報を上書きできる特徴を有している。
開発した書き換え型ホログラムデバイスを用いて,物体や被写体の多数の異なる視点からの画像(視差画像)を要素ホログラムとして,それらを数百ミリ秒から1秒で順次書き込むホログラフィックステレオグラフィーの技法で,元の物体や被写体の3次元ホログラムを再現できる。この法を用いることによって,3次元ホログラフィックデジタルサイネージなどが作製可能だという。
現在は,青色レーザー(488nm)でのホログラフィクステレオグラフィーを用いて,赤色レーザー(632.8nm)と緑色レーザー(532nm)のマルチカラー再生の書き換え型3Dマルチカラーホログラフィックディスプレーデバイスの開発に成功しているという。今後は,ホログラムのフルカラー化への拡張を目指していく。
さらに,ミリ秒オーダーの高速応答性の電界印加型フォトリフラクティブポリマーの開発にも成功しており,それらにメモリー機能を付与することにより,さらに高速の3Dホログラフィックディスプレーデバイスへと展開させるとしている。
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