岡山大ら,細胞の発光で癌の形質転換の抑制薬を発見

岡山大学大は,3次元培養のORGANOGENIXと米ハーバード大学と共同で,微細加工3次元細胞培養プレート(商品名:ナノカルチャープレート)を利用した新しい三次元ドラッグ・スクリーニングシステムをつくり,そのシステムを利用して癌細胞の形質転換の一種である上皮間葉転換(EMT)を抑える薬を見つけた(ニュースリリース)。

臓器の癌(固形癌)の多くでは,正常な細胞同士の接着が失われて運動性の高い細胞へと変化する上皮間葉転換(EMT)という現象が起こることが知られている。EMTはTGFβと呼ばれる増殖因子によって引き起こされる。培養皿の中で癌細胞を培養しTGFβを加えると,細胞が上皮様の接着を失って紡錘形に変化することを顕微鏡下で見ることができる。

このときTGFβは,癌細胞の表面にあるTGFβ受容体に結合して,細胞内にシグナルが伝達され,Eカドヘリンと呼ばれる細胞間接着因子の量が減ることが分かっている。EMTを抑えることができれば,癌細胞の浸潤や転移を防ぐことができる可能性があるが,そのような薬(EMT阻害薬)やこれを探索する方法は 今までなかった。

癌細胞をナノカルチャープレートという特殊な細胞培養皿の上で培養すると,プレートの上にプリントされた特殊なグリッドを足場にして,癌細胞が運動をしながら三次元(3D)の細胞塊(スフェロイド)をつくる。そこにTGFβを加えると細胞間接着が失われ,スフェロイドがあまりつくられない。

逆に,TGFβ受容体の阻害薬を加えると,Eカドヘリンが増えて細胞間接着が強まるため,スフェロイドは大きくなる。さらに,スフェロイドの中には酸素が行き届かないため,低酸素(ハイポキシア)状態となる。

スフェロイドの低酸素の程度は,ハイポキシアプローブと呼ばれる薬を細胞に加えて,低酸素の程度に応じて細胞が赤く光ることで測ることができる。つまり,EMTが進むとスフェロイドが小さくなり酸素濃度が上がるため,細胞は光らない。EMTが抑えられるとスフェロイドが大きくなり低酸素となるため,細胞が光る。

このような原理を利用して,ORGANNOGENIXは,EMTを抑える新しい薬をつくるためのシステムをつくった。このシステムは,上記の原理によるため,ロボットとコンピュータを利用して大量の薬の中からどの薬がEMTを抑えるのかを見つける,いわゆるハイスループットスクリーニング(HTS)に適している。

実際に,研究グループはこのシステムを活用し,1,330種類の小分子化合物からEMTを抑える薬を探索して,TGFβの受容体の働きを抑えるSB525334と,細胞周期を抑えることが知られていたSU9516がEMTを抑えることを見つけた。

SU9516は,癌細胞の形質転換や転移を抑制するために有用である可能性が考えられるという。

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