原研ら,ゲルマネンの原子配置を決定

日本原子力研究開発機構は,東京大学,高エネルギー加速器研究機構(KEK)らのグループとの共同研究により,全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いて単原子層状物質グラフェンのゲルマニウム版であるゲルマネンの原子配置を決定した(ニュースリリース)。

ゲルマネンは炭素と同じ第14族元素に属するゲルマニウムなどで構成された,1原子層の厚みしかない原子シート。ナノテクの新材料であるグラフェンに続くものとして期待されている。ゲルマネンはグラフェンとは異なり自然界に存在しないが,最近の金属基板上での合成の報告を契機に,世界中で精力的に研究されている。これまで,ゲルマネンの原子配置についてはいくつか提案はされていたが,まだ実験的な構造決定の報告はなかった。

今回本研究グループは,表面敏感な TRHEPD法を用いて,アルミニウム基板上でのゲルマネンについて調べた。TRHEPD法では,10keV程度のエネルギーを持つ陽電子ビームを試料表面にすれすれの視射角で入射させ,試料表面で反射した陽電子を回折パターンとして観測する。

電子の反粒子である陽電子は,電子とは逆のプラスの電荷をもつため,陽電子ビームが物質に入射すると物質表面から反発力を受ける。このため,陽電子ビームを物質の表面にすれすれの角度で入射させると,陽電子が物質へ侵入する深さを表面から1-2原子層程度の極めて浅い領域に抑えることができる。

ゲルマネンのような極めて薄い物質の場合,基板の内部といったような不必要な情報をできるだけ排除しなければ正確な構造決定をすることができない。今回は,この陽電子の表面敏感性を最大限に利用し,1原子層分の厚みしか持たないゲルマネンの原子配置を決定した。

この結果,これまでの予想に反し,原子配置の対称性が破れていることが明らかになった。基礎となる原子配置がわかったことにより,ゲルマネンを用いた省エネ・高速・小型の新しい電子デバイスの設計・開発の促進が期待されるとしている。

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