光産業創成大学院大学,トヨタ自動車,浜松ホトニクスらは,核融合燃料に対向して設置したレーザーから強度を変えて3段階で対向 2ビーム(計6ビーム)照射することで,効率の良い核融合燃料の新たな加熱機構を発見した(ニュースリリース)。
研究では,直径500㎛の球殻状の核融合燃料に,最初にピーク強度3.0×1011W/cm2,パルス幅25.2ナノ秒のフットパルスレーザーを対向2ビーム照射し,核融合燃料を内向きに加速し,この核融合燃料に,ピーク強度2.1×1013W/cm2,パルス幅300ピコ秒のスパイクパルスレーザーを対向2ビーム照射し,中心部に押し込んでコアを形成した。
最後に形成されたコアにピーク強度6.7×1018W/cm2,パルス幅110フェムト秒のヒーターパルスレーザーを対向2ビーム照射してコアを加熱,発光させた。
このように核融合燃料の圧縮によるコアの形成後にヒーターパルスレーザーでコアの加熱を行なう「高速点火方式」でコアからのX線発光を観測したのは初めて。またこの発光はスパイクパルスレーザー照射後の状態と比較して6倍以上にも増大していたという。
観測結果をシミュレーションで確認した結果,コアへ対向2ビーム照射をすることで,レーザーパルスがコアの縁で吸収されて光の速度に近い高速の電子流が発生し,この高速の電子流がコア中央部で交差して強い磁場が形成され,電子流を構成する電子がこの磁場に巻き付き,コアが効率よく加熱されていることが分かった。
ヒーターパルスレーザーからコアへ伝搬されたエネルギー変換効率は14%程度と見積もられ,米国,日本,中国の大型レーザー施設の実験結果(3〜7%)を大きく上回った。
今回の発見により,高密度なコアでも対向の高速電子流が交差すると磁場が形成されてこの加熱機構が維持されることが分かった。この加熱機構は,レーザー本数が多く大型のレーザー核融合施設と比較して小型で,コンパクトなレーザー核融合施設でのレーザー核融合実用化が期待できることを示したもの。
今後は,引き続きコンパクトな装置でのコア加熱の効率化,レーザーの大出力化を進め,レーザー核融合の実用化に向けた研究開発を進めていきくとしている。
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