岡山大学の研究グループは,植物の成長に不可欠な光合成を維持して生育を向上させる葉緑体の機能を明らかにした。
研究グループでは,モデル植物であるアブラナ科の雑草「シロイヌナズナ」を用いて,光合成を行なう細胞内の「葉緑体」を維持する重要因子の解明を行なってきた。
今回注目したVIPP1と呼ばれるタンパク質は,葉緑体の膜に凝集して結合し,光合成のエネルギー転換反応と水分解を行なう光合成装置の維持にも重要であると予想されてきたが,その詳細は不明だった。
今回,このタンパク質を緑色蛍光タンパク質で可視化して細胞内での機能を明らかにし,膜が高温などでストレスを受けた際の修復に関与することを突き止めた。
VIPP1タンパク質を植物で恒常的に発現させることにより,発芽や初期成長が悪い植物の生育改善や,高温にさらした植物の光合成活性低下を2割程度,軽減させることができたという。
現在はモデル植物を使った結果だが,今回の知見を作物で応用することにより,葉緑体機能の強化と地球温暖化などの気象変動に対応できる作物への利用が期待できるとしている。
光合成効率を向上させた作物の開発は,バイオエネルギーやバイオベースの工業製品を生産するクリーンエネルギーのためのバイオマス原料としても注目されている。
これらのニーズに応えるため,同グループでは,旺盛な生育を示すバイオマス作物ソルガムを用いた新たな葉緑体機能因子を見つけるための研究も民間企業と共同で行なっている。
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