リコーは,エンジンなどの点火用途にも使用可能となる高出力なファイバーカップリング式808nm帯半導体レーザー「ハイパワーVCSELモジュール」を開発した(ニュースリリース)。
同社は,プロダクションプリンターなどの書き込み光源として商用化したVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)素子を用いた新しいアプリケーションの開発を行なってきた。
今回,VCSEL素子の発光効率の向上,発光チャンネルの大規模集積化により,アレイの大幅な高出力化を実現した。さらにモジュール全体の放熱性を高めたことにより,コージェネレーションシステムなどで使用される発電用ガスエンジンの点火方式として注目されている,レーザー点火プラグヘッドのレーザー結晶の励起用光源に必要な高いエネルギー出力が可能になった(QCW(擬似連続波発振)動作:200W)。
このVCSELモジュールには,高い出力性能,コンパクト性,温度変化に対する波長安定性という3つの技術優位性がある。
VCSELアレイ単体の出力は310W,モジュールとしてのファイバーアウト出力200Wを達成しており,ファイバーカップリング式のVCSELモジュールとしてはこれまでに無い高い出力が可能になった。
また,面上に膨大な数の発光チャンネルを有するVCSELアレイと,各発光チャンネルに対応するレンズを1枚のチップに集積したMLA(Micro Lens Array)とを用いており,従来の端面発光レーザーを用いたモジュールよりも極めて少ない,数点の部品での実装と小型化を実現した。
さらに,VCSELはその構造上,従来の端面発光レーザーに比べ波長の温度安定性が10倍程度高く,温度変化に対する波長安定性に優れている。
レーザー点火プラグヘッドのレーザー結晶などに使われる固体レーザーの励起においては,安定した出力を実現するため,励起光の波長安定性が極めて重要となる。この波長安定性により,精密な温度コントロール装置が不要となり,VCSELモジュールの大幅な小型化が可能となるという。
これらの技術優位性に加え,独自の光学技術を組み合わせることにより,多様なアプリケーション向けのレーザーデバイスやモジュールの供給を行なうことができるとしている。
現在のところ製品化は未定だとしているが,今後,同社は,レーザー加工機,レーザーパターニング等の表面加工,非熱加工,センシング,といった用途への展開も見据え,さらなるアプリケーション開発を進めいくとしている。