トプコンと前田建設工業は,近赤外線を用いたインフラ構造物の塩害劣化の調査のために用いるコンクリート表面塩分量の非破壊・非接触の検査システム「コンクリート劣化診断システム」を開発した(ニュースリリース)。
コンクリートの塩害劣化を調査する場合,コア抜きによる試料採取後,塩化物イオン量の測定を行なうのが一般的。しかし,この方法では構造物にダメージを与えてしまうこと,分析には多大な時間と費用を要する。
そのため,例えば橋梁の場合,調査箇所は通常,1橋梁あたり数箇所程度のサンプリング調査を行なっていた。これでは調査データの妥当性が確保できず,診断が正しく行なえない可能性がある。
このような背景から、両社は2014年からコンクリート表面の塩分量を非破壊・非接触で測定する装置および検査システムの共同研究を開始し,実用化した。
このシステムは,コンクリート表面からの反射光のうち,近赤外領域の分光スペクトルから表面塩分量を推定するシステム。非接触で測定が可能で,普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートだけでなく,高炉B種セメントやフライアッシュB種セメントを用いたコンクリートでも計測が可能。
このシステムを用いることにより,簡易に広範囲のコンクリート表面塩分量のマッピングを行なうことができ,目視や打音検査などでは分らない,塩分量の多い個所,すなわち,潜在的に塩害劣化の危険性が高い個所を知ることができるという。
従来は,コア抜きにより計測していた塩分濃度の計測が非破壊・非接触で計測できることで,これまでは難しかった塩害調査箇所のスクリーニングを効率的に行なうことができるようになり,インフラ構造物の長寿命化を図ることが期待できるとしている。
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