京大,ナノバブルのおしくらまんじゅうを観測

京都大学の研究グループは,腫瘍細胞の破壊,バイオセンサーなどで応用が期待されるナノ粒子が,水溶液中にある際にレーザー加熱によって生じるナノバブルの成長がナノ粒子の数密度(ナノ粒子間距離)によって異なるという新現象を発見した(ニュースリリース)。

多くの場合,ナノ粒子は液体環境で使用され,ナノ粒子の光学応答が重要な役割を果たす。また,液体中の固体表面にレーザーを集光照射するというナノ粒子の液中作成法においても,生成直後のナノ粒子はレーザーと相互作用し,その性質が変わってしまうため,ナノ粒子の光学応答を正しく理解する必要がある。

ナノ粒子水溶液に適当な波長のレーザーパルスを照射すると,ナノ粒子の表面が数100℃~1000℃程度にまで瞬時に加熱される。この熱は,ナノ粒子内だけでなく周囲の溶液にも拡散し,溶液が加熱された結果としてミクロな気泡(ナノバブル)が発生する。

しかし,従来は,こうしたナノバブルの発生および成長過程とナノ粒子の数密度は無関係だと考えられており,レーザーフルエンスやパルス照射回数,波長などのパラメータに注目した研究がほとんどで,ナノ粒子の数密度には全く注意が払われていなかった。

研究では,強いレーザーを密度の高いナノ粒子溶液に照射すると,ナノバブル同士は触れ合わないくらい離れているにもかかわらず,ナノバブルの成長が抑制されることを発見した。

ナノバブル周辺に発生する圧力波が他のナノバブルを圧迫する(ナノバブルのおしくらまんじゅう),という新しい考え方を提 案することで,従来の考え方では説明できないこの現象の説明に成功した。

この研究で提案する新モデルでは,バブル内の温度のみならず内部圧力も数密度制御によってある程度独立に制御できることを示している。

ナノバブル内には,溶液およびナノ粒子双方の構成物質が気体や溶融体として混在するので,この方法で温度と圧力の両方を制御し,内包物を加熱・凝縮させることにより,新たな材料を創製できるとしている。

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