筑波大ら,4色のポリマー球体光共振器を作製

筑波大学,独デュースブルグエッセン大学,物質・材料研究機構らは共同で,単一の蛍光色素分子のみを添加したポリマー球体から多様な発光特性を示す光共振器の作製に成功した。さらに,作製したマイクロ球体共振器を連結することで,長距離の光エネルギー伝搬と多段階波長変換を実現した(ニュースリリース)。

太陽電池や発光素子などの光電子デバイスや人工光合成研究において,効率的な光エネルギー移動は素子の特性向上のために重要な役割を果たす。

一般に光エネルギー移動は,発光・再吸収過 程による放射エネルギー移動と,無輻射過程による共鳴エネルギー移動(FRET)の2つに分類される。

しかしながら,放射エネルギー移動は長距離のエネルギー移動が可能ですが効率は非常に低く,一方,FRETは効率は高いものの10nm以内の近距離でしか起こらない。従って,長距離かつ高効率な光エネルギー移動を可能にする手法の開発が求められている。

今回,研究グループは,単一の蛍光色素分子の凝集状態(濃度)に応じて,緑・黄・橙・赤のそれぞれ異なる共鳴発光特性を示すポリマー球体光共振器の作製に成功した。

作製した球体同士を連結することで,光エネルギーがエネルギードナー性球体からエネルギーアクセプター性球体へと数ミクロンの距離を伝搬し,さらに効率的に波長変換することを見出した。

さらに,緑→黄→橙など,多段階の光エネルギー伝搬が可能であることを示し,球体の組み合わせによる伝搬方向の選択性や変換効率の違いについても明らかにした。

単一の色素分子を用いて複数の発光色を示すポリマー球体光共振器を作成するプロセスや技術,また,エネルギードナーおよびアクセプターとなるポリマー共振器を連結することによる長距離・多段階な光エネルギー変換特性は,発光変調レーザーや光集積回路,光導波路などへの応用に向けた要素技術になることが期待できるとしている。

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