筑波大ら,共役ポリマー球体光共振器を開発

筑波大学は,独デュースブルグエッセン大学,大阪大学,物質・材料研究機構らと共同で,高いエネルギー移動効率と長距離光伝搬特性 を示す共役ポリマーブレンド球体光共振器の開発に成功した(ニュースリリース)。

光エネルギー移動は,天然の光合成系や人工光合成,さらには太陽電池や発光素子などの光電子デバイスにおいて重要な役割を担う。有機材料において高効率なエネルギー移動を実現するためには,エネルギー供与性(ドナー)分子と受容性(アクセプター)分子が相分離せずに均質に混じり合うことが必要となる。

しかしながら,有機光電子デバイスにおける主要な構成要素である共役ポリマー同士は一般に相溶しづらく,複合化を行なうと相分離して析出してしまうことから,効率よくエネルギー移動が実現する例は稀だった。

今回,研究グループは溶液中での自己組織化条件を適切に制御することにより,ドナーポリマーとアクセプターポリマーが相分離せずに均質に混じり合ったマイクロ球体を形成可能であることを明らかにした。その結果,ポリマー球体内部において100%近いエネルギー移動を実現し,球体共振器からの共鳴発光波長を自在にチューニングできることを示した。

また,複数のドナー球体,アクセプター球体,およびドナー/アクセプターブレンド球体を連結することで,球体内部に閉じ込められた発光を球体間で10ミクロン以上伝搬させ,さらに波長変換することが可能であることを示した。

今後,これらの技術を用いて,広範囲の光エネルギー捕集やポリマー光回路などへの応用が期待できるとしている。また,ポリマー共振器 による光伝搬および波長変換技術は,WGMレーザーなどへの応用に向けた要素技術になると期待できるという。

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