東大ら,セラミックス粒界に新規構造を発見

東京大学の研究グループは,大阪大学と共同で,原子分解能走査型透過電子顕微鏡法(STEM)と超高感度X線組成分析手法により,ジルコニアセラミックス粒界のイットリウム偏析原子構造を初めて明らかにした(ニュースリリース)。

ジルコニアセラミックス(ZrO2)は,燃料電池の固体電解質に用いられるセラミックスであり,その特性向上のためにイットリウム(Y)などの異種元素が添加されている。このイットリウム添加は結晶内部のイオン伝導性を向上させる働きがあるが,粒界などの界面部分に濃化(偏析)してしまうと,粒界のイオン伝導を阻害することが知られている。

そのため,異種元素の粒界への偏析現象は電池特性を劣化させる大きな要因とされてきた。今後,固体電解質をさらに高性能化するためには,この現象の本質を解明し,的確な制御が必要となる。

原子分解能走査型透過電子顕微鏡法(STEM)と超高感度X線組成分析手法を融合することにより,ジルコニアセラミックス粒界のイットリウム偏析構造を原子レベルで初めて明らかにした。その結果,イットリウム偏析構造は原子レベルで規則化した結晶構造であることがわかった。

この構造は理論計算により予測された構造とも良く一致し,粒界構造,イットリウム,酸素空孔の相互作用によって粒界にのみ形成される新たな相であることが明らかとなった。

この結果は,セラミックスに添加される異種元素が粒界などの界面にどのように分布し,機能特性に影響を及ぼすのかに関する原子レベルの基礎知見を与える発見であり,今後の高性能な固体電解質開発に指針を与える重要な成果だとしている。

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