月刊OPTRONICS 2015年 1月号特集連動企画

 

月刊OPTRONICS 2016年1月号 では「X線自由電子レーザーと進展するその応用」を特集します。

自然現象や生命活動の根源を探ろうとすると,究極的にはその原子や分子の並びかたや動き,そしてそれらの中での電子の動きまでを知る必要があります。もし,これらを直接観察できれば,難病の原因解明や薬の創出,私たちの生活を向上させる新物質の創出などに役立つと期待されています。

非常に強い光源としてX線レーザーがあれば,原子や分子の瞬間的な動きを観察することができます。しかし短波長のX線では,反射率の高い鏡が存在しないので共振器を作ることができませんでした。

しかし1980年代に,長いアンジュレータに電子の塊を通して,後ろの電子から出る光と前の電子との相互作用によって電子を波長間隔に並べ,コヒーレントなX線を発生させる自己増幅自発放射(Self-Amplified Spontaneous Emission : SASE)機構が提案され,XFELの実現可能性が出てきたのです。

2000年代にはアメリカ・欧州・日本で施設の建設が進められ,日本では2005年にプロトタイプ機でX線より波長の長い真空紫外光(波長600Å,最大出力30μJ/pls)のレーザー発振に成功。次年度からは,XFEL施設の建設プロジェクトを開始し,2011年3月に施設が完成し「SACLA」と名付けられました。

SACLAが出力するX線レーザーは,SPring-8の放射光と比較して,高いピーク輝度(約10億倍),狭いパルス幅(約1000分の1),高いコヒーレンスという特性を持ちます。

2016年1月号では,SACLAの稼働後,次々と成果が発表されているXFELを用いた研究についてご寄稿頂きました。詳しくはこちらのページをご覧ください。

また,このコーナーでは,XFELやSACLAについての解説のほか,Webジャーナルで取り上げたXFELによる成果を紹介します。

目次
1:XFELとは?
2:XFELが捉えた原子・分子の現象
3:XFELが明らかにするバイオの世界
4:XFELの機能向上と新たな観察法

XFELとは?

XFELとSACLAついて(外部リンク)
XFEL計画とは(理化学研究所 放射光科学総合研究センター)
「XFELとは,X線自由電子レーザー(X-ray Free Electron Laser)の略で,波長がX線(可視光よりも波長がとても短い)領域のレーザーです。 XFELは,物質を原子レベルの大きさで,かつ瞬時の動きを観察することができると考えられているまったく新しい「夢の光」です。」

XFEL(SACLA)計画とは(理化学研究所 放射光科学総合研究センター)
「この機構でXFELを実現するためには、超高品質の電子ビームを作る技術や、高精密電子制御技術が要求されます。日本の技術の粋を結集することによって、このような新技術を作り上げ、完成したのがSACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)なのです。 」

研究手法と成果(理化学研究所 播磨事業所)
「X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAでは,線型加速器により加速した高エネルギーで高品質の電子ビームを,アンジュレータという磁石列が上下に並んだ装置(全18台)に通して,XFELを生成します。SACLAでは,既に2011年3月23日にX線の発生を確認していますが,ここから位相をそろえてレーザー発振を実現するためには,電子ビームの密度を数百倍に高めるとともに,数μmという非常に高い精度で電子ビームをアンジュレータ内に通す必要がありました。」