奈良先端科学技術大学院大学と電力中央研究所は共同で,酸化物半導体「IGZO」を用いた薄膜トランジスタの極低電圧駆動と,高信頼性を同時に大幅に改善して達成した(ニュースリリース)。
透明かつフレキシブルな次世代ディスプレイの形態を目指す中では,駆動に用いられる薄膜トランジスタの活性層材料として酸化物半導体IGZOに注目が集まっている。その広い実用展開に向けて残された課題は,環境負荷や電界に対する信頼性とフレキシブル化を実現するための低温プロセスの導入であり,さらに駆動電圧を下げることで消費電力を削減することとなっている。
このたび,これら3つの課題を同時に解決するため,室温で液体状態であるイオン液体と,室温でも形成できるIGZOの界面を用いて電気二重層を形成し,通常より多くの電子が利用できる状態で薄膜トランジスタを動作させた。
具体的には,薄膜トランジスタ上にイオン液体を滴下,電圧を印加することでIGZOとイオン液体界面に電気二重層が形成された。これにより,通常より多くの電子を利用することが可能になり,低い電圧でも素子が駆動し,電界ストレスによる閾値電圧シフトなどの劣化を抑制でき,また,素子高性能化にもつながるという。
この素子は,一般的に高い信頼性を示す酸化シリコン絶縁膜を用いた素子の性能を大きく超え,駆動電圧が40%以下,劣化量が1/2以下という高い性能を達成した。この技術を用いることで,透明かつフレキシブルなディスプレイを長期間安定して動作させることが可能になるとしている。