広島大ら,トポロジカル絶縁体の強磁性発現機構を解明

広島大学の研究グループは,中国科学院上海微系統研究所(SIMIT,CAS)および日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同で大型放射光施設SPring-8のJAEAビームラインBL23SUにて,高輝度シンクロトロン放射光を利用した内殻吸収磁気円二色性(XMCD)観測システムを用いて,磁性トポロジカル絶縁体の強磁性発現機構を世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。

異常量子ホール効果が観測された磁性トポロジカル絶縁体のCrx(Sb1-yBiy2-xTe3について,強磁性の発現機構を調べるために内殻吸収スペクトルにおけるXMCDを観測した。その結果,Cr 2p→3d内殻吸収端はもちろんのこと,Te 3d→5pおよびSb 3d→5p内殻吸収端においても微小ながらも明確なXMCDを観測した。

それらのXMCDの符号の関係から,Te 5pおよびSb 5p電子のスピン磁気モーメントはCr 3dのそれに対しそれぞれ反平行,平行に結合していることが分かったという。

この研究で、TeやSbの5p電子がCrのスピン同士をつなげる「のり」の役割をし,磁性トポロジカル絶縁体Crx(Sb1-yBiy2-xTe3 の磁石になる原因となっていることを初めて明らかにした。

この研究は,外部磁場を必要としない高い強磁性転移温度を持ち,室温における異常量子ホール効果の発現に向けた新しい物質設計への指針を与えるとともにトポロジカル絶縁体を利用した次世代の超低消費電力スピン・デバイスへの開発や,超高速の電子を利用した次世代型のスーパーコンピューターへの開発につながっていくものと期待されるとしている。

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