電通大,レーザーによる新たなライブセルイメージング法を開発

電気通信大学の研究グループは,新たに開発した光熱顕微イメージング法を搭載したポンプ・プローブ顕微鏡により,試料の表面を高解像度で,かつ同時に複数の画像で撮影することに成功した(ニュースリリース)。

細胞などの微小な試料を観察する有力な手段として光熱顕微イメージング法があるが,これまでの研究では,光源に光パラメトリック増幅器を利用した波長切り替え方式により複数の画像を撮影しているため,撮像に時間を要し,状態が変化する生体の細胞などを適切に計測することは困難だった。

今回の開発では,ポンプ・プローブ顕微鏡のポンプ光源として,複数の波長の半導体レーザーを利用し,それぞれの波長を別々の周波数で変調する。検出部ではプローブ光による検出信号の周波数成分を複数チャネルのロックインアンプで分離することにより,試料の表面を高解像度で,かつ同時に複数の画像で撮影することを実現した。

光源はパルス幅100ps,パルス繰り返し周波数40MHzの白色光源ファイバーレーザーを用いた。白色パルス光から,ポンプ光とプローブ光として,それぞれ波長488,632nmの成分を光フィルターで抽出する。ポンプ光は強度変調を与えられ,プローブ光と重ねられて試料に照射される。

このシステムでは,プローブ光の強度雑音を抑圧するために,プローブ光の参照光を用意し,参照光とプローブ光の差を検出するバランス検出器を利用している。検出器からの出力信号を2台のロックインアンプに入力し,それぞれポンプ光の変調周波数と,その2倍の周波数でプローブ光の変調を同時に観測した。

この方法を利用して,実際に,病理組織の染色で最も一般的なヘマトキシリン・エオジン染色したマウスの卵巣の切片を観察し,従来の顕微鏡による明視野像に比べて,より鮮明なイメージ像の撮影に成功した。

今回の成果により,脳などの生体内の細胞を生きたまま,安定的に観察することが可能となり,認知症やアルツハイマー病の診断などへの応用が期待されるという。

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