明大,体内時計老化のメカニズムを解明

明治大学の研究グループは,体内時計老化の正体を発見した(ニュースリリース)。

睡眠-覚醒リズムなどに代表される概日リズムは,他の生理機能と同様に加齢の影響を受けることが知られている。例えば,ヒトが齢を取ると早起きになったり,眠れなかったりするのはそのため。

このような加齢変化は,概日リズムを生み出す体内時計の老化によって引き起こされると考えられている。しかしこれまで,体内時計の老化が引き起こされる主要因は明らかではなかった。

研究グループは,高感度電子増倍型冷却CCDカメラを用い,微弱な化学発光を高解像で長期間記録するシステムを構築した。そのシステムを用い,ほ乳類における体内時計中枢である脳・視床下部・視交叉上核(suprachiasmatic nucleus: SCN)における時計遺伝子の発現リズムを一細胞レベルで観察した。

その結果,齢をとったマウス(20~24ヶ月齢)のSCN細胞のリズムにおいて,細胞一つ一つのリズムは若いマウス(3~5ヶ月齢)のものとほとんど変わらないが,SCN内でそのリズムはバラバラ(解離している)になっていることを発見した。

この結果は,SCN細胞同士の神経連絡が低下していることを示すもの。さらに,これらの加齢変化はマウスの飼育箱の光条件を12時間明期:12時間暗期という通常の飼育環境で飼育したマウスでは小さく,一日中真っ暗な状態(恒常暗)で飼育したマウスでは,より大きな変化として観察された。

これらのことは,メリハリのない光環境が体内時計の加齢をより加速させ,適切な光環境が体内時計機能の加齢変化を抑えることを細胞レベルで示すもの。

また,研究グループは,雌マウスを用いた検討で,加齢に伴う不妊症状は体内時計と光環境の不適合によって引き起こされることを報告している。さらに,高齢者において,日中の光受容が注意力の増加,睡眠の質の改善に有効であるという報告が多くなされている。

今回の「メリハリのない光環境が体内時計の加齢を細胞レベルで促進する」という結果は,雌の生殖機能の加齢変化や高齢者の生理機能にとって,日中の正しい光受容が重要であることも示している。

研究グループでは加齢が体内時計に与える影響の作用点がわかったことで,今後の老化及び体内時計研究の発展に貢献するとともに,適切な光環境が睡眠-覚醒リズムなどに代表されるヒトの概日リズムの加齢の防止に有効だとしている。

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