東芝,CO2をPET材料に変換する光合成触媒を開発

東芝は,二酸化炭素を80%のファラデー効率でエチレングリコールに変換する分子触媒を開発した(ニュースリリース)。この分子触媒は,太陽光エネルギーを使用して,二酸化炭素と水を炭素化合物に変換する人工光合成向けに開発したもの。

これまで人工光合成技術として報告されてきたものの多くは,二酸化炭素を一酸化炭素やギ酸などの2電子還元物質に変換する技術。より複雑な還元反応によって生成される多電子還元物質においては,炭化水素に直接変換する銅などの触媒の研究が進められているが,副生成物が多いという課題があった。今回開発した分子触媒は,二酸化炭素を多電子還元物質の工業原料エチレングリコールに変換することができる。

今回開発した分子触媒は,金属表面上にイミダゾリウム塩誘導体を高密度に吸着させたもの。金属表面に吸着したイミダゾリウム塩誘導体が分子上で二酸化炭素分子と相互作用をすることで,従来実現できなかった反応を可能にした。

この分子触媒に外部電源を接続し,水溶液中に溶解した二酸化炭素を還元したところ,ファラデー効率80%の割合でエチレングリコールに変換することができた。これは,分子触媒が,二酸化炭素の反応を促進するとともに,2電子還元反応よりも複雑な多電子還元反応の反応場としての役割を果たしていると同社は推測している。得られたエチレングリコールは,汎用性の高い工業原料としてPETボトルやポリエステル繊維・樹脂の原料にも使用できる。

同社は今後,この分子触媒を開発中の人工光合成技術に適用することで,2020年代後半の実用化を目標に,汎用性の高い工業原料を高効率で製造する技術の開発を進めていく。

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