NECら,太陽光発電の抑制量を適切に配分する出力制御技術を開発

NECは,東京大学,東京農工大学と共同で,電力会社やエネルギー管理サービス事業者(アグリゲータ)が発電事業者に適用する太陽光発電の出力制御技術を開発した(ニュースリリース)。

昨今,太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーによる発電の導入が進んでいる。しかし,発電量が天候に依存して大きく変化し不安定なため,導入拡大に伴い,季節や時間帯によっては,大幅な余剰電力の発生が予想され,電力の需給バランスが崩れる懸念がある。

現在,余剰電力を防ぐため,発電出力制御システムの導入が進められている。一方で,再エネ発電の正確な発電量予測は難しく,確実な電力需給バランスを実現するために,電力会社が発電事業者に求める発電抑制量は過剰になる傾向があり,課題になっている。また発電抑制が一部の発電事業者に偏ることなく,抑制量を公平に分担する制御が求められている。

開発した技術は,導入の拡大が著しい太陽光発電について,発電量の予測値と予測の当たる確率を高精度に把握し,出力制御に活かす。これにより,過剰な発電抑制を低減し,さらに気候条件や抑制履歴等を考慮したきめ細かい抑制量の分配で,複数の発電事業者への公平な抑制も可能にする。

具体的には,複雑な気象変化により予想が困難とされる太陽光の発電量を予測し,さらに気象パラメータ(雲の量や気温など)を使った独自の指標で,天気予報のような当たる確率(予測確率)を付与できる「信頼度つき発電量予測」技術を開発した。

この技術では,対象日の発電量の信頼度を予測する際,過去の気象変化の類似性に着目し,数千を超える気象パラメータの組合せを用いて,気象の類似度合いを表現する独自の手法を用いる。これにより発電量の信頼度を高精度に把握できるようになった。例えば,予測確率95%での発電量は,下限X[kW]~上限Y[kW],といった予測値の上下限幅を把握することが可能。

このように,予測値のずれ幅が算出できることで,電力会社等は,上下限値内の複数のケースに対する制御の仮説が立てられるようになり,より適切な抑制量の設定と配分ができるようになる。

また「信頼度つき発電量予測技術」で予測した太陽光発電の発電量をもとに,電力会社やアグリゲータが実際の抑制量を決定し,各大規模電力発電事業者に対して,抑制量を最適に配分・一括制御する技術を開発した。

最適配分では,先述の発電量予測と,過去の出力抑制の履歴や気候条件に基づき,公平性を考慮しながら過剰抑制を低減する独自のアルゴリズムで,きめ細かく抑制量を決定する。また,この抑制量を制御対象の発電事業者に一斉伝達して制御する。この技術について,NECが,電力システムの運用シミュレーションを行なって評価した結果,従来よりも抑制日数は多くなるものの,発電抑制量そのものは低減できるという有効性を検証できた。

これらの技術を用いることで,再生可能エネルギー発電事業者の発電機会の損失を最小限に抑えることが可能となり,発電抑制の低減と配分の公平性に貢献するとしている。