電通大ら,超短パルスレーザで有機材料の処理過程での性能評価に成功

電気通信大学と台湾国立交通大学の研究グループは,太陽電池材料のひとつとして期待されている,有機化合物の製作過程における材料の処理過程の性能評価を行なうことに成功した(ニュースリリース)。

電通大のグループは,特殊な構造を持った可視光超短パルスレーザを用い,世界最短パルス幅を15年以上保持してきた。更に世界に唯一しかない同グループの開発した128チャンネルロックイン検出器を用いて,太陽電池物質内の起電力効率を決定する過程を解明するため,高感度広帯域超高時間分解分光スペクトル測定に成功した。測定には世界最高性能の時間分解能レーザ分光装置を用いた。

この解析により,太陽電池の起電力の素となる荷電担体が光吸収により発生する励起電子が生成し,電荷移動・電荷分離あるいは再結合の段階を経て変化する様を目の当たりに測定することに成功した。これにより,アニーリングの効果が荷電担体生成から起電力になる過程の内どの段階で影響を受けるかを詳細に明らかにすることに成功した。

この装置は,有機材料に限らず色々な物質に適用できるとしている。初期段階の物質の持つ励起電子の生成から電流を発生する過程がどれ位速いかがその材料が原理的にどれ位の効率で起電力を発生できるかが判定できる。従って,その持っている能力を太陽電池製造の最終段階まで進まずに判定できるため材料探索に非常に有効となるという。

さらに材料のプロセスの条件出し,及び製造過程の太陽電池本体に与える製造条件によって変わる物質の特性の変化をその途中段階でチェックすることもできる。最終過程まで行かなくても,材料あるいは製造途中段階での各過程の条件出しや,幾つか有るプロセスの内どれを使うとより効率よく発電できるかという判定にも使える。

この評価法を用いると太陽電池材料の評価を,材料や製造途中段階での各過程の最適条件出しに使うことができるので,研究グループは太陽電池開発に際し,製造を終えてから判定するよりも時間や経費の大幅な節約ができるとしている。

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