東工大,蛍光検出を用いて骨再生のイメージングに成功

東京工業大学と京都大学の研究グループは,多糖類のデキストランを原料に用い,骨を対象としたマルチモーダルイメージングプローブの開発に成功した(ニュースリリース)。

マルチモーダルイメージングプローブは,複数の検出手法により対象部位の可視化を可能にするプローブであり,一つの検出方法では分析することが困難な病態を多角的に分析することを可能にする。今回,体内断層撮影を可能にするMRIと検出感度の高い蛍光検出が可能なマルチイメージングプローブの合成を達成した。

開発したプローブの母体としたデキストランは,グルコースを構成糖とする多糖であり,食品添加物に利用されるなど人体に対する安全性が担保されているため,臨床応用に対するリスクも少ない。また,多糖を用いるイメージングプローブは,物性を大きく変えること無く,薬剤含有させることも可能であり,イメージングと治療を同時に行なうことも可能となる。

今回の研究では,デキストラン多糖にアセチレンとアミノ基を導入したテンプレートに対するカップリング反応利用する骨のマルチモーダルイメージングプローブの合成を行なった。アジド基を有するビホスホナート(BP)を骨認識部位として,カルボン酸を有する検出部位カクテルをそれぞれ導入することに成功した。検出部としては,放射性金属や,MRI造影剤とした働く金属イオンを配位できる金属キレーター(DOTA),数センチメータ単位では生体内を透過する近赤外蛍光を発光する色素(Cy5)を導入した。

この化合物を用いて骨の等価体であるヒドロキシアパタイトに対する結合試験を行なったところ,骨結合部位であるビホスホナートの導入量が増えるとともに結合効率も向上した。さらに,下肢部に骨の再生モデルを移植したマウスを用いて再生部位のイメージングを行なった。その結果,蛍光イメージング法において,マウスの下肢部の再生モデルのイメージングに成功した。

さらに,Gdをキレートさせてプローブを用いて,MRIによる再生モデルの断層イメージングを行なった。その結果,結合部の持っていないGd-DTPAと比較して,このイメージングプローブが再生部位により留まり,その部位の可視化を可能にしていることが示された。

この研究により開発したデキストラン誘導体は,さらに薬剤を結合させることにより,骨折の病態の診断だけでなく,患部への薬剤輸送を可能にし,診断と治療を同時に行なうことを可能にする。また研究グループは,このテンプレートを用いて様々な結合部位を導入することにより,他の診断プローブの開発に繋がることも期待できるとしている。

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