OIST,ナノ粒子のサイズと化学的組成を制御する新たな方法を開発

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は,ナノ粒子のサイズと化学的組成を制御する方法を開発するなかで,今回,その結晶化度を制御する方式,またはナノ粒子内部で原子が整列する方式を発見した(ニュースリリース)。

多くの研究者や企業は,その用途またはデバイスに最適化されていないナノ粒子を使用している。ナノ粒子の結晶化度は,粒子の光学的,磁気的および電気的性質に影響を与える。その最適化のためには,結晶化度など,ナノ粒子のいくつかの基本的な性質を制御する方式を解明する必要がある。今回開発した方式は,さまざまな結晶化度の半導体ナノ粒子を生成することができるもの。

単結晶ナノ粒子では,そのすべての原子が規則正しく配列している一方で,アモルファスナノ粒子では原子は不規則な状態にある。多結晶構造では,原子が規則正しく配列したいくつかの領域からなり,それぞれの領域は結晶粒となっている。同素材であっても結晶化度の相違により全く異なる性質を示す。例えば,煤は結晶粒を持たないアモルファス状態の炭素だが,ダイヤモンドは結晶構造をとっている。

一般的に,バルク半導体材料の結晶化を誘導する方式は知られているが,微小な半導体ナノ粒子の結晶化度および結晶の数を制御するのは今回が初めて。開発した方式が特定の性質を制御することができる理由の一つは,改良型ナノ粒子局所堆積装置に基づく実験方法による。

この装置の最も重要な機能の一つは,高真空チャンバ内で生成されたフレッシュな半導体ナノ粒子が別のチャンバ内に置かれた基板まで飛行し堆積するまでの間に,粒子同士がどの様に相互作用し,またはどの様に粒子が装飾されるかを解明可能にする点にある。このとき基板は,ナノ粒子の性質に常に影響を与える。

今回の方式では,まず対象となる飛行中のナノ粒子に金属原子のビームを当てる。金属原子はナノ粒子の表面上に拡散し,数㎚の大きさの金属ナノクラスタを形成し,生成物の結晶化を誘導する。次に,非常に簡単な物理的処理であるプラズマクリーニングによって選択的に金属ナノクラスタのみを取り除く。その結果,目的の結晶化度の無傷の半導体ナノ粒子だけを得ることができる。

研究グループは結晶化度の制御について,より特別なナノ粒子を生成するために制御したい数多くの性質の一つであり,最終的には,ナノ粒子をカスタマイズするルールブックにおいて新たな指針の一つとなり得るとしている。

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