東大,電子軌道の量子揺らぎによる新しい超伝導を発見

東京大学の研究グループは,希土類金属間化合物PrV2Al20(Pr:プラセオジム,V:バナジウム,Al:アルミニウム)において,異常な金属状態が実現することを見出した(ニュースリリース)。

また,この異常な金属状態は,電子の形を決める電子軌道の量子揺らぎによるものであることが分かった。さらに,この電子の形の揺らぎを媒介とした新しいタイプの超伝導が常圧下(1気圧)で初めて実現していることを明らかにした。

超伝導とは,低温で電子がクーパー対と呼ばれる対を形成することで金属の電気抵抗がゼロになる現象で,工業的な応用の観点からも重要視され,これまで盛んに研究されてきた。

この電子同士がクーパー対を形成するためには,電子同士を引きつける力が必要となる。この引きつける力の起源として,これまで格子振動が考えられてきた。しかし,近年の研究から,銅酸化物高温超伝導体等ではスピンと呼ばれる電子が持つ非常に小さな磁石の揺らぎが,電子同士を引きつける力として重要な役割を果たすことが分かっている。

研究グループはこの新たな電子の対形成メカニズムの発見について,超伝導研究の新たなブレークスルーとなる可能性を秘めていると同時に,電子の形(電子軌道)の揺らぎを用いた新たな物質科学研究の方向性を提示する重要な成果だとしている。

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