京大ら,高齢者の転倒危険度をレーザを用いて評価する装置を開発

京都大学,筑波大学,慶應義塾大学らによる研究グループは,高齢者の日常生活自立度低下(寝たきり化)につながる転倒事故の抑止のため,被験者の転倒リスクを評価して転倒予防の意識啓発を促す計測システムを開発した(ニュースリリース)。

システムは,村田機械が製品化し,同社グループ会社の日本シューターより「STEP+」(ステップ プラス)の製品名で,平成26年12月(出荷は平成27年1月)より全国の医療・介護施設などへ販売される。

高齢者の転倒は単純な運動機能低下だけでなく,中枢神経系の機能も絡めた複雑な機能低下が関与しているとの考え方が広まっている。さらに,二つの課題を同時に処理する機能を二重課題(デュアルタスク)処理能力というが,近年ではこの機能低下が転倒を惹起する要因となっているという仮説が注目されている。

このような機能が低下している高齢者では,その後に転倒しやすいことや,適切なトレーニング(二重課題処理能力向上トレーニング)によってこれらの機能向上効果が得られることなどが明らかになっているが,適切なトレーニング(二重課題処理能力向上トレーニング)によってこれらの機能向上効果が得られることなどが明らかになっている。

これまで,二重課題処理能力の測定には,『100から1ずつ減算しながら歩行する』といった課題や,『お皿の上にボールを載せてボールを落とさないように歩行する』といったアナログな測定方法が用いられてきた。そこで研究グループは,定量的に二重課題処理能力を測定するというコンセプトの基に,転倒発生リスクを評価するための機器を考案した。

開発した装置はPCの画面上に前後左右のいずれかの方向を示す矢印が表示され,その指示に従って被験者が移動する際の足の動きをLRF(レーザ・レンジ・ファインダ)を用いて測定する。LRFは周囲180度,約4mの範囲の距離情報を取得するセンサで,床から高さ15cm,足のすねの位置を計測し,計測された距離情報についてパターン認識を行なうことで被測定者の左右の足の位置を取得する。

開発したアルゴリズムと組み合わせることで,PCの画面上に移動する方向を示す矢印が表示されてから,被測定者が動き始めるまでの反応時間,両足の移動距離と移動が完了するまでの時間を計測し,被測定者が正しく両足を移動できたかを瞬時に判定することが可能。この装置による計測結果が,転倒のリスク評価として有用となりうるのかも検証できた。

研究グループは,この装置が高齢者の転倒予防に取り組む医療・介護施設や,各区市町村の地域包括支援センターなどで導入され,常設利用または健康関連行事などでの一時的利用されることを見込んでいる。

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