東工大ら,1G以下から20Gまでの加速度を1チップで検出するMEMSを開発

東京工業大学とNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は共同で,可動錘に金を用いることにより,同等な分解能のシリコンMEMS加速度センサと比較して,寸法を約10分の1に小型化したMEMSセンサを開発した(ニュースリリース)。

静電容量型MEMS加速度センサにおいて,加速度検出範囲は可動錘の寸法と質量に強く依存するため,単一錘による加速度検出範囲の広域化は困難だった。また,従来の高分解能シリコンMEMS加速度センサでは大きな錘が必要なため,異なる検出範囲を有する複数のセンサを1チップに集積できなかった。

そこで,研究グループは静電容量型加速度センサの分解能が可動錘の質量に比例することに着目し,錘材料をシリコン(室温時:約2.3g/cm3)から金(室温時:約19g/cm3)に置き換えることで,センサ寸法を約10分の1に小型化した。

これにより,複数の超小型・高分解能MEMS加速度センサを1チップに集積し,1G以下から20Gまでの超広域加速度を1チップで検出できるデバイス構造を実現した。

錘の測長結果と容量-周波数特性により,同サイズのシリコンMEMS加速度センサでは到達できない低雑音性能と,従来の100倍以上の高分解能を達成した。さらに金の特徴として,半導体微細加工技術と電解金めっきを用いたデバイス作製法によりMEMS構造を微小センサ回路(CMOS回路)直上に集積でき,MEMSとセンサ回路が占めるチップ面積の大幅な小型化も期待できる。

また,金は他の高密度材料と比較して耐酸化特性があるため,従来技術と比較して,サイズだけでなく製造プロセスの面でもCMOSとの整合性に優れるとしている。

現在,医療・交通・インフラなどの用途で必要なMEMS加速度センサには1G以下を含む広域な加速度の精密計測が求められている。研究グループは今回の成果について,特に医療用人体行動検知センサにおいてブレイクスルーであり,今後,正確な人体行動解析に基づく医療診断やロボット開発へ向けた新デバイス・システム開発につながると期待している。

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