阪大,次世代ディスプレイに資する液晶化合物の新規合成法を開発

大阪大学は,含フッ素化成品の基幹工業原料である「四フッ化エチレン」から,次世代液晶ディスプレイの素子材料として期待されている「テトラフルオロエチレン架橋鎖を有する液晶化合物」を短工程で合成する新規反応を開発した(ニュースリリース)。

四フッ化エチレンは,フライパンのコーティング剤のテフロンをはじめとするフッ素系樹脂の基幹工業原料であり,工業的には非常に安価な化合物。しかし,その用途はフッ素系樹脂の製造に限られており,医薬品・農薬・機能性材料など含フッ素化成品の製造原料として利用されることはほとんどなかった。

一方,四フッ化エチレンの分子中に含まれる2つの炭素(C)原子それぞれに炭素官能基を1つずつ結合させた「テトラフルオロエチレン架橋鎖を有する液晶化合物」は,次世代の液晶ディスプレイの素子(液晶)材料として,その安価かつ大量に合成できる手法が期待されている。しかし,このような化合物の代表的な合成法は汎用性に乏しく,非常に高価な,あるいは毒性の強いフッ素化剤を用いる必要があった。

研究グループは今回,四フッ化エチレンの分子中に含まれる2つの炭素(C)原子それぞれに異なる芳香環を1つずつ結合させる反応の開発に取り組んだ。具体的には,「カルボメタレーション」という手法を四フッ化エチレンに適用したところ,四フッ化エチレンの一方の炭素原子に1つ目の芳香環を,もう一方の炭素原子に銅(Cu)を結合させる反応(カルボキュプレーション)により「フルオロアルキル銅化合物」が高収率で得られることを見出した。

得られたフルオロアルキル銅化合物は,ヨードベンゼンとの反応により銅原子を2つ目の芳香環へと置換可能であることを明らかにした。異なる2つの芳香環が導入された化合物はテトラフルオロエチレン架橋鎖を有する液晶化合物へと短工程かつ良好な収率で変換できる(この手法を用いることにより6工程 収率64%;既知法では10工程以上を要する)。

四フッ化エチレンは安価な工業原料なため,今回の研究の成果は,低コストで液晶化合物を合成することを可能にするだけでなく,四フッ化エチレンを原料とした新たな含フッ素機能性材料の開発につながるもの。研究グループでは,四フッ化エチレンの新たな用途展開に繋がることに期待できるとしている。

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