NCGM,自己免疫疾患の病態形成の新たなメカニズムを解明

国立国際医療研究センター研究所は,自己免疫疾患の病態形成の新たなメカニズムを解明した(ニュースリリース)。

代表的な自己免疫疾患の一つであるSLEにおいては,免疫細胞の一種であるB細胞が,自分自身を攻撃してしまう自己抗体と呼ばれるタンパク質を作り,それが様々な臓器を攻撃し,傷害を引き起こす。

B細胞が自己抗体を作るまでの第一段階は,まずB細胞の内部に存在するリソソームと呼ばれる小さな袋状の構造の中で,Toll様受容体(Toll like receptor 7; TLR7)と呼ばれるタンパク質が,病原体や壊れた自分の細胞に由来する物質を感知して,I型インターフェロンを産生する。

I型インターフェロン(IFN-I)がひとたび産生されると,細胞はIFN-Iを感知してさらに大量にIFN-Iを産生し,それが引き金となって自己抗体を産生するようになる。

研究チームは,TLR7が働く場所であるリソソームと呼ばれる細胞内の構造に着目した。リソソームは本来細胞の中に入ってきた病原体や,古くなった自分の細胞を分解するゴミ処理場としての役目を果たしている。

そのようなリソソームで,TLR7がIFN-I産生を引き起こし,B細胞が自己抗体を産生するようになるためには,B細胞のリソソームに特別な仕組みが備わっていると考えた。その仕組みを詳しく解析した結果,リソソームに存在するSLC15A4というタンパク質がIFN-I産生と自己抗体産生に重要な役割を果たしていることを発見した。

SLC15A4というタンパク質を欠損させたマウスでは,リソソームにおいてTLR7が病原体や壊れた自分の細胞に由来する物質を感知してもIFN-I産生が起こらず,B細胞による自己抗体の産生も抑制されていた。さらにそのメカニズムとして,SLC15A4がリソソームからプロトンと特定のアミノ酸をくみ出すことによって,TLR7の機能に最適なリソソーム内環境を造りだし,自己抗体産生を引き起こすお膳立てをしていることを明らかにした。

SLC15A4を欠損するマウスでは,この仕組みが働かないために自己免疫疾患の病態が改善したと考えられる。研究チームは今回の成果により,SLC15A4というタンパク質がSLEや炎症性腸疾患の新しい創薬標的となり得ることが示されたとしている。

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