大阪大学,東京大学,京都大学,慶応大学,国立循環器病研究センター,KAIST(韓国)の研究グループは,心臓の血管新生に関する新しいメカニズムを発見し,心臓の循環を支える冠動脈と冠静脈の形成は別の増殖因子で制御されることが初めて明らかになった(ニュースリリース)。
これまで冠動脈については,心筋細胞が分泌する血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)の作用により心内膜内皮が発芽して形成されることは報告されていたが,冠静脈形成のメカニズムは明らかではなかった。
今回,心筋細胞が分泌する血管新生因子の1つであるangiopoietin-1(Ang1)が,心筋特異的に欠損するマウスを作成したところ,このマウスの冠動脈の形成は正常で,冠静脈が特異的に欠損していることを見出した。さらに,胎生期のマウスの心臓に隣接する静脈洞に存在する未分化内皮細胞が,心筋の分泌するAng1の作用によって心臓内へ遊走して,更に静脈内皮へと分化することで冠静脈が形成されることが明らかになった。
虚血性心疾患に対しては,効率良く血管新生を誘導できる新規の治療法の開発が望まれる。そのために心臓での胎生期の冠血管新生のメカニズムを明らかにする必要があるが,詳細はこれまで明らかではなかった。今回の成果は今後,心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患に対する新しい血管新生療法の開発に繋がると期待される。
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